tama’s diary

慢性腎臓病の猫の治療記録

ラクテック(注)とソルラクトの違い

輸液のラクテック(注)とソルラクトの違いについて

ラクテック注、とソルラクト輸液は、共に乳酸リンゲル液で、含まれる電解質や乳酸の量は、同じです。ラクテック注が大塚で、ソルラクトがテルモと製造会社が違う位です。

ソルラクトの方がNaとClが1mEq/Lだけ多く、pHもラクテックが6.0~8.5で、ソルラクトが6.0~7.5と違いが無いわけではないようですが、ソルラクト輸液は後発品です。

ソリタT3,ソルデム3A,ハルトマンG3はいずれも維持液でpHの僅かな違いを除けば、電解質、カロリーなどすべて同じです。ソリタ以外は後発品です。
ソリタはエイワイ、ソルデムはテルモ、ハルトマンはアイロム、という会社です。

 

細胞外液補充液(等張液)とはどのようなものか

代表的な細胞外液補充液(等張液)として、0.9%生理食塩水があります。生理食塩水は、血液と同等の浸透圧でできているため、血管内に投与するとその大半は血管内に留まる性質があります。しかし、生理食塩水だけでは電解質バランスが崩れてしまうため、K(カリウム)とCa(カルシウム)を生理食塩水に付帯させた輸液として、リンゲル液が開発されました。

しかしリンゲル液には、代謝性アシドーシスに陥ってしまうという側面があるため、乳酸を加えた乳酸リンゲル液が開発されました。点滴ボトルに「乳酸リンゲル液」と記載されている製品を見る機会があるかと思います。

そして、その後乳酸から全身で代謝される酢酸を加えた酢酸リンゲル液や、重炭酸リンゲル液等が開発されていきました。乳酸は肝臓で代謝されるため、肝機能障害がある患者さんの場合は、酢酸リンゲル液を使用したりします。

維持輸液とはどういったものか


次に、維持輸液の代表的な組成を見ていきましょう。(代表的輸液500ml中イオンはmEq/Lで表記)

■1号輸液(開始輸液)
ナトリウム:90g、カリウム:0g、クロール:70g、乳酸:20g、糖類:5.2g

■2号輸液(脱水補給輸液)
ナトリウム:84g、カリウム:20g、クロール:66g、乳酸:20g、糖類:16.0g、リン:10g

■3号輸液(維持輸液)
ナトリウム:35g、カリウム:20g、クロール:35g、乳酸:20g、糖類:21.5g、マグネシウム:3g

■4号輸液(術後回復輸液)
ナトリウム:30g、カリウム:0g、クロール:20g、乳酸:10g、糖類:21.5g

3号輸液(維持輸液)と4号輸液(術後回復輸液)は1、2号輸液に比べて糖類が多く付加されています。これは簡単に言うと「ブドウ糖液とリンゲル液を半分混ぜている」ということなので、リンゲル液が薄まり(ナトリウムとクロールが約半分)糖分が増えているということになります。糖分が増えると、水分補給効果が高くなります。

また2号輸液(脱水補給液)と3号輸液(維持輸液)はカリウムが付加されています。よって3号輸液(維持輸液)は体に必要な水分や電解質、エネルギーを補充する輸液として最適であることから術後に使用されることが多いのです。

 

なぜ術前にソルラクト(乳酸リンゲル液)に変更するのか

手術の当日(術前)は絶飲食のため体内は脱水になっています。また、術中出血やストレスによる血管透過性の亢進により、細胞外液の喪失が起こったり、耐糖能低下によって血糖コントロールが不安定になることから糖分を抜く必要があります。

なので、出棟時には細胞外液補充液を使用します。麻酔には肝代謝型の薬を使用するため、肝臓に負荷がかかります。乳酸リンゲル液では乳酸アシドーシスになるので、アシドーシスの予防のために術前は酢酸リンゲル液を使用するのが一般的です。しかし、肝機能データや手術する部位、または医師の指示によっては乳酸リンゲル液や、生理食塩水、重炭酸リンゲル液といった細胞外液補充液を選択することもあります