tama’s diary

慢性腎臓病の猫の治療記録

ネスプ(ダルベポエチンアルファ 遺伝子組み換えエリスロポエチン)基本情報 薬剤誘発性高血圧 

ネスプ注射液30μgプラシリンジの基本情報から抜粋

猫ちゃんは人間でいうと小児になると思うので小児のところを抜粋した。

 

製薬会社:協和キリン
薬価・規格:4370円(30μg0.5mL1筒)

 

注意すべき副作用
血圧上昇 、 脳梗塞脳出血 、 肝機能障害 、 黄疸 、 AST上昇 、 ALT上昇 、 γ−GTP上昇 、 浮腫 、 不整脈

 

用法・用量(主なもの)
〈腎性貧血〉
6.1 小児:通常、小児にはダルベポエチン アルファ(遺伝子組換え)として、週1回0.33μg/kg(最高20μg)を静脈内投与する

6.2. 腹膜透析患者及び保存期慢性腎臓病患者
小児:通常、小児にはダルベポエチン アルファ(遺伝子組換え)として、2週に1回0.5μg/kg(最高30μg)を皮下又は静脈内投与する

いずれの場合も貧血症状の程度、年齢等により適宜増減するが、最高投与量は、1回120μgとする

なお、腎性貧血の小児に対して1回3μg/kgを超えて投与する場合、慎重に投与すること(小児に対して1回3μg/kgを超える使用経験はない)

本剤の投与に際しては、腎性貧血であることを確認し、他の貧血症(失血性貧血、汎血球減少症等)には投与しないこと。

目標ヘモグロビン濃度を14g/dL(ヘマトクリット値42%)に維持した群では、10g/dL(ヘマトクリット値30%)前後に維持した群に比べて死亡率が高い傾向が示されたとの報告がある。

(高齢者)
本剤の投与に際しては血圧及びヘモグロビン濃度あるいはヘマトクリット値等を頻回に測定し、投与量又は投与回数を適宜調節すること(一般に高齢者では生理機能が低下しており、また高血圧症等の循環器系疾患を合併することが多い)。

だいたい5~7日で小児(皮下投与)は代謝される。

(適用上の注意)

薬剤調製時の注意
他剤との混注は行わないこと。

できるだけ使用直前までピロー包装からシリンジを取り出さないこと。外箱開封後は遮光して保存すること。
シリンジ先端部のフィルム・チップキャップが外れている、またはシリンジの破損等の異常が認められるときは使用しないこと。
(保管上の注意)
2〜8℃に保存。

 

猫専用エリスロポエチン製剤の特徴と効果~慢性腎不全末期における腎性貧血治療の選択肢として

https://www.konekono-heya.com/news/2021/april/16.html

 

副作用:薬剤誘発性高血圧

エリスロポエチン

慢性腎不全ではエリスロポエチンにより貧血は改善するが、同時に急激な高血圧発症や増悪(高血圧性脳症)をきたすことがある。エリスロポエチンによる血圧上昇反応は、ヘマトクリット値の上昇とともに循環血液量が増加し、血液粘稠度を高め血圧上昇をきたす。すなわち、腎性貧血では長期間、ヘマトクリット値が低く、これに適応していた状態から急激にヘマトクリット値が上昇した結果、血圧上昇をきたすと推測される。
エリスロポエチン治療中には20〜30%の頻度で高血圧発症あるいは悪化がみられ、本邦の市販後調査でも29%に血圧上昇がみられた。エリスロポエチンによる透析患者の血圧上昇反応は透析前の慢性腎不全患者より大きく、透析前には高血圧をきたさないとする報告もある506)。透析患者における血圧上昇反応は高血圧家族歴がある場合、大きく、遺伝的素因の関与が示唆されている507)。
エリスロポエチン使用時(中止後も)には、ヘマトクリット値の推移に注意する。血圧管理不良で高血圧性脳症や脳出血に至ることもある。血圧上昇の対策として透析時の除水量の調節、降圧薬の追加・増量、エリスロポエチン減量を行う。エリスロポエチン中断または/同時に瀉血により赤血球数を低下させ、血圧上昇反応を抑制することもある。

 

静脈注射して30分後に血圧上昇の論文⇩

Clinical Trial Hypertens Res. 2004 Feb;27(2):79-84. doi: 10.1291/hypres.27.79.
Blood pressure response to erythropoietin injection in hemodialysis and predialysis patients

組換えヒトエリスロポエチン(rHuEPO)は高血圧を誘発することが報告されています。血液透析を受けている患者(HD)と透析前の慢性腎不全(CRF)の患者の血圧に対するrHuEPOの単回注射の効果を調査しました。 HDを受けた41人の患者と透析前CRFの36人の患者がrHuEPOの静脈内注射を受け、血圧と血漿エンドセリン-1が注射の前と30分後に測定されました。平均血圧はHD患者で有意に上昇しましたが、CRF患者では上昇しませんでした。

 

エポエチンと高血圧性脳症の症例

https://www.umin.ac.jp/fukusayou/adr112c.htm

<使用上の注意(下線部追加改訂部分)>
1.一般的注意
(5)本剤投与により血圧上昇を認める場合があり、また、高血圧性脳症があらわ          れることがあるので、血圧、ヘマトクリット等の推移に十分注意しながら投与すること。特にヘマトクリット値は徐々に上昇させるよう注意すること。また、投与中止後もヘマトクリット値が上昇する場合があるので、観察を十分行うこと。血圧上昇を認めた場合には本剤の投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
4.副作用

(2)高血圧性脳症:急激な血圧上昇により、頭痛、意識障害、痙攣等を示す高血圧性脳症があらわれ、脳出血に至る場合があるので、血圧、ヘマトクリット値等の推移に十分注意しながら投与すること。

 

症例 No.1                         企業報告
患者 女  69歳 腎性貧血 合併症:高血圧症                       
1日投与量・投与期間:3000IU(週3回)約70日→3000IU(週2回)約1ヵ月
副作用-経過および処置                         
腎性貧血のため3ヵ月半前より本剤の投与を3000IU(週3回)で開始し、貧血の改善が認められていたが、意識不明で倒れているところを発見され入院した。入院時、大声で呼ぶと反応はあったが、意識は混濁し、左下肢痙攣が認められ、血圧性脳症と診断された。収縮期血圧は 260mmHg 、頭部CTでは 出血部位および梗塞によるLDA等は認められなかった。ニフェジピンの舌下投与瀉血(200ml)、ジアゼパム、塩酸ジルチアゼムの点滴等の処置でその日のうちに意識レベルは改善された。その後、3週間ほど本剤の投与を中止していたが、再び貧血が悪化したため1500IU(週3回)に減量し投与を再開したが以後再発はしていない。                                 
併用薬:マレイン酸エナラプリル、ニフェジピン、アルファカルシドール、コンドロイチン硫酸鉄、フマル酸第一鉄、メチルドパ、ニルバジピン、ウラピジル       

投与後の血圧:230-240/90-100 
1500IU減薬してからの血圧:180-200/90-100 

 症例 No.2                         企業報告
患者 男 56歳 腎性貧血 合併症:高血圧症、糖尿病
1日投与量・投与期間:3000IU(週3回)約3ヵ月→7日間中止→1500IU(週3回)約20日
副作用-経過および処置
糖尿病性腎症にて腎不全に陥り、透析を導入した。水分コントロールが悪く、血圧は200mmHgを超えることがしばしばあった。ヘマトクリット値15.7%の腎性貧血に対し本剤の投与を3000IU(週3回)で開始したところ、2ヵ月後ヘマトクリット値は25%に達した。投与開始3ヵ月後、下痢が続き、体重が減少したため、投与量を減量したが、ヘマトクリット値は一時的に28~30%へ上昇し、血圧は透析析除水しても下降せずコントロール不能になった。さらに2週間後、血圧は230~250mmHgとなり、急にもの忘れがひどくなり、失見当識を認め、頭痛、嘔気を訴え、高血圧性脳症と診断された。脳CTにより右被殻内に小出血が認められた。瀉血によりヘマトクリット値は20%まで下降、血圧も低下した。6日後、脳出血巣は消失し、ヘマトクリット値は20~22%に維持された。その後1500IU(週3回)に減量して投与することで、ヘマトクリット値は21~22%、血圧は降圧剤の投与により150~180mmHgにコントロールされている。            併用薬:マレイン酸エナラプリル、ニフェジピン、カルシトリオール、エルカトニン、アルプロスタジル、生合成ヒトインスリン、ジピリダモール、トラネキサム酸、フィトナジオン、カルバゾクロムスルホン酸ナトリウム、酢酸トコフェノール、沈降炭酸カルシウム 

投与前の血圧:160/80

症状発現時期の血圧: 210/94

中止後の血圧: 180/70

 

他の高血圧脳症の例

1.投与前:140/60

  投与後:130/70、130/70、150/60

2.投与後:230-240/90-100

3.投与前:160/80

  投与後:185/80、210/94

4.投与後:270/118

5.投与後:242/146

6.投与前:130/80

  投与後:169/- 、170/90、140/90、230/128

7.投与前:118/50

  投与後:232/132、212/112、250/130

8.投与前:120-160/64-80

  投与後:180/60、200-260/-

 

表 7 代表的な ESA の副作用と随伴症状
高いエビデンスレベルの文献で証明されている副作用
 1 .高血圧症 ・ESA の直接的,間接的作用により血圧が上昇することがある
 2 .血栓塞栓症 ・ CVD 合併例では,過度の貧血改善(Hb 値の正常化)により
血栓塞栓症の発症率が増加する可能性がある
・癌患者への ESA 療法で血栓症増加が報告されている
 3 .赤芽球癆 ・抗 EPO 抗体の出現に起因して発症する

その他の ESA 治療が関連すると考えられる副作用

 1 .体外循環回路内残血量の増加や抗凝固薬必要量の増加
・過度の貧血改善に伴う粘稠度増加が関係すると考えられる
 2 .固形癌の発症・進展
・基礎研究では発癌や癌の進展との関係が報告されている

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsdt/49/2/49_140/_pdf