拡張期血圧が高い!昼間はずっと上も下も高い!
Q: 高齢になって逆に拡張期が高い場合には何か血管抵抗が高くなる原因が存在する可
能性があります。
A: 一番考えられるのは腎血管性高血圧で、高齢者ですと動脈硬化による腎血管性高血圧により、レニン・アンジオテンシン系が亢進して血管抵抗が増加し、拡張期血圧が高くなっている可能性があります。そのような場合には、腎エコーのドプラーによる腎血流の評価や血漿レニン活性の測定など、腎血管性高血圧のスクリーニングを行うことが勧められます。
Q: 基本的に腎血管性高血圧を疑ったとき、レニンも出るかもしれませんが、通常、すでに降圧薬が入っていることが多いと思うのです。この場合のメルクマールとしてはどういったことが挙げられますか。
A: ACE阻害薬やARBを服用しているとレニンが高くなります。それでも、レニンが正常であったり低ければ、腎血管性高血圧は否定的であると考えられます。カプトプリル負荷試験をご存知の方も多いと思いますが、腎血管性高血圧ではACE阻害薬を服用したときのレニンの上昇が増強されますので、ACE阻害薬やARBを飲んでいても血漿レニン活性が例えば10とか20以上と非常に高い数値であれば、腎血管性高血圧の可能性を考えて、さらに検査を進めるのが適切であると思います。
Q: 逆に非常に値が低い場合に関しての研究はいかがでしょうか。
A: 拡張期血圧が低いというのは冠動脈血流が拡張期に多く流れることから、あまり拡張期血圧が低いと冠動脈血流が減少して虚血性心疾患のリスクが高くなるのではないかという、いわゆるJカーブ現象が議論されています。しかし、いろいろメタ解析などが
行われており、それをみますと、多少拡張期血圧が低くても直接的には冠動脈疾患などのリスクに影響は少なく、むしろ拡張期が低いのは動脈壁の弾性が低下して、拡張期が低くなるとともに収縮期が高くなっている場合が多く見られます。したがって、拡張期が低いことよりも収縮期が高いことが心血管イベントのリスクに関係していて、そちらのほうに介入するべきだというように考えられています。また、拡張期が低いからといって拡張期だけを上げることは難しいと思いますので、特に選択的に拡張期血圧に対して介入することを考える必要はないと思います。
Q: 拡張期血圧だけが高いケースに関しては、原則これは経過観察でもかまわないのでしょうか。
A: 比較的若年、中年で心血管イベントのリスクが低い人たちに多いので、研究によっては拡張期血圧が高いと心血管イベントが多少増加するという成績もあるのですが、逆に有意差がなかったという成績もありますので、あまり積極的に介入する必要はないと
思います。
https://www.kyorin-pharm.co.jp/prodinfo/useful/doctorsalon/upload_docs/201164-1-06.pdf
末梢血管抵抗【血管の硬さ】が大きい、つまり動脈硬化が強いと、血圧は高値になります。
心臓から連続する太い血管は、高い血圧にも耐えられるようにクッションのように弾力性に富み、収縮期には広がり、拡張期にはゴムのように元に戻ろうとします。
この元に戻ろうとする圧力により、血液をさらに末梢に送り出します。
拡張期血圧が高くなるのは、心臓から遠い細い血管(末梢血管)が動脈硬化により硬くなっていくために起きてきます。
拡張期血圧のみが高い場合は、末梢血管の動脈硬化はあるが、太い血管の弾力性は保たれている事が考えられます。
その後加齢と共に、大動脈(太い血管)の動脈硬化も進展していくと収縮期血圧の上昇と共に収縮期血流も増加するため、拡張期血圧は低下し、拡張期の血流は低下します。
このように高血圧は、最初は拡張期血圧優位の高血圧になり、いずれ収縮期・拡張期の両者が上昇する高血圧へ、さらに収縮期優位の高血圧へ変遷することになります。
また、脈圧(収縮期と拡張期の血圧の差)が少ないのが気掛かりです。60歳を過ぎて脈圧が多い場合は動脈硬化の進展に注意しなければなりませんが、脈圧が少ない場合は心不全、脱水、不整脈発作時などの病態を考慮しないといけません。
https://www.tokushima.med.or.jp/kenmin/doctorcolumn/hc/552-426
なお、歳をとるにつれ、また全身の動脈硬化が進むにつれ大血管も硬くなります。その結果、収縮期血圧は徐々に高くなり、それにともない末梢に送り出す血液量も減るため逆に拡張期血圧は低くなっていきます。
最後に今回参考にした資料に強調されていたので、追加しておくと、高齢者になると上の血圧が高くなり、逆に下の血圧が低くなるのは前述のとおりです。ここで高齢者に上の血圧が高いために内服治療をおこなった際、下の血圧が下がりすぎると(60mmHg未満がひとつの目安)、心臓に悪影響を及ぼす可能性もあるとのことでした。心臓を栄養する血管、冠動脈と言いますが、この血管は拡張期に血液が多く流れるため血圧が低すぎると十分な血液が確保できないためです。*参考:廣岡良隆:拡張期血圧ーその規定因子,下げ方,下げ過ぎの危険, Medical Practice vol.34 no.8 2017
https://hatakeyama-naika.com/2017/12/31/diastolic-blood-pressure/
血圧を下げる薬と特徴
薬の種類 | 作用・特徴 | 主な副作用 |
---|---|---|
カルシウム拮抗薬 | 血管の収縮に必要なカルシウムイオンの細胞内への流入を抑え、血管を拡張させる。血圧を下げる力が強い。 | 浮腫、顔の紅潮、動悸、歯肉肥厚 |
ARB(アンジオテンシンⅡ受容体阻害薬) | 血管を収縮させ、塩分・水分の排泄を抑えるホルモン(アンジオテンシンⅡ)の働きを阻害する。副作用が比較的少ない。 | 動悸、めまい |
ACE阻害薬(アンジオテンシン変換酵素阻害薬) | アンジオテンシンⅡを作り出しにくくする。心臓や腎臓を守る作用もある。 | 空咳 |
サイアザイド系利尿薬 | 腎臓から塩分や水分を排泄する働きを促進して血圧を下げる。ARBと併用されることが多い。 | 低カリウム血症、高尿酸血症、脱水 |
アルドステロン受容体拮抗薬 | 血圧上昇や心臓肥大などに関わるホルモン(アルドステロン)の働きを阻害する。心不全の治療にも使用される。 | 女性化乳房、高カリウム血症 |
β遮断薬 | 心筋や血管に交感神経の興奮が伝わらないようにする。不整脈の治療にも用いられる。 | 徐脈、喘息 |
https://hidamari-naika.jp/treatment/highbloodpressure.html
猫の高血圧と甲状腺機能亢進症のスライド
http://www.sagami-central-amc.com/clinicnote/pdf/clinicnote09_14.pdf