tama’s diary

慢性腎臓病の猫の治療記録

フィラリア 

フィラリア症は、フィラリア(イヌ糸状虫)という寄生虫に感染することによっておこる病気です。この寄生虫は蚊が媒介します。高温多湿で蚊の多いわが国では非常に多くのイヌが感染しています。

フィラリアが寄生すると、さまざまな症状をひきおこします。とくにこの虫の成虫が心臓と肺動脈に寄生した場合がもっとも深刻です。はじめのうちはめだった症状はありませんが、イヌが年をとるにしたがって寄生するフィラリアの数がふえていき、心臓や血管などの循環器系に障害あらわれるようになります。

フィラリアに寄生されると、イヌの体内で成虫が無数の小さな子虫(ミクロフィラリア)を生み、それらがイヌの血管中に入ります。そこで血液をとって顕微鏡で見ると、ミクロフィラリアの有無やその数が分かります。また、フィラリアの成虫が血液中に排出する物質(抗原)に対する免疫反応によって、フィラリアに感染しているかいないかを知ることができます。これら2つの検査法を組み合わせることによって確実な診断が可能です。

フィラリア症に使われる薬は、虫の発育段階によって異なります。フィラリアに感染し、成虫が心臓(右心室)と肺動脈に寄生するようになったら、薬を使って駆除するしか治療法はありません。手術によって虫をとり出す方法もありますが、十分に有効な治療法とはいえません。

したがって、この病気の治療のポイントは、虫の数が少ないうちに発見し、すみやかに薬で駆除することです。また、まずはフィラリアに感染しないことが大切です。そのための予防薬もいろいろつくられています。

●抗フィラリア

 →フィラリアを殺す薬

 →フィラリアには感染幼虫(蚊の体内)、幼虫、成虫、ミクロフィラリアの4つの

       段階があります。
  イヌに寄生するフィラリアを殺す薬は、成虫を殺す薬と幼虫および
  ミクロフィラリアを殺す薬の2つに分けられます。

  ▲成虫を殺す薬

  ヒ素をふくむ薬です。イヌの筋肉あるいは静脈に注射して投与すると、
  成虫の栄養源であるブドウ糖の吸収をさまたげ、また成虫の細胞のエ
  ネルギー代謝をおさえて、強い駆除効果を発揮します。
  これにはメラニソル、メラルソミン、チアセタルサミドなどがあります。
  ただし幼虫やミクロフィラリアには効きません。

  この薬はヒ素をふくむため、イヌに副作用をもたらすことがあります。
  しかし副作用以上に問題なのが、薬で殺した虫が肺につまってしまうことです。
  その対策として、抗炎症薬の副腎皮質ステロイド薬や抗生物質、それに血液
  の凝固をさまたげるアスピリンなどをいっしょに与えます。
  ヒ素の副作用がひどいときは、ジメルカプロール(BAL)という解毒薬
  を用います。

  ▲ミクロフィラリアを殺す薬

  シアニン色素(青紫色の粉末)のジチアザニンは、ミクロフィラリアを殺す
  作用があります。この薬を1週間程度、口から投与します。
  投与している間イヌの便が青く染まります。

  ほかにレバミゾール、イベルメクチン、ミルベマイシンオキシムなども、
  ミクロフィラリアの駆除に使われます。

フィラリア感染予防策

 →心臓への寄生をはばむ

 →フィラリアに感染しないためには、その中間宿主である蚊との接触
  さけることが重要です。
  しかし、室内で飼われているイヌでも、完全に蚊を遠ざけることは不可能です。
  そこで開発されたのが、「感染予防薬」です。

  これらの薬は、イヌがフィラリアに感染するおそれのある期間、つまり蚊に
  刺される可能性のある期間を通じて与えつづけます。こうしておけば、
  仮に感染がおこっても、幼虫の段階でフィラリアを駆除することができるのです。

  ▲マクロライド

  フィラリアの幼虫がイヌの体内に入ってから、成虫に成長しながら心臓や
  肺動脈にたどりつくまでに2~3か月かかります。
  この間に感染予防薬が駆除効果を発揮すれば、心臓への寄生をはばむことが
  できます
  マクロライド類は幼虫(およびミクロフィラリア)に対して非常に強力に
  作用し、1回の投与量で確実にこれらを駆除してしまいます。
  ただし成虫には効果はありません。
  イベルメクチン、ミルベマイシンオキシム、モキシデクチンなどがあります。

  この薬はフィラリアだけでなく、回虫や条虫などにも効果を発揮します。
  これらの寄生虫神経伝達物質のひとつ、グルタミン酸の作用を弱め、
  虫をまひさせて殺します。

  ▲その他の薬

  マクロライド類よりも一世代前の感染予防薬にジエチルカルバマジンがあり、
  いまも使われています。この薬は幼虫(およびミクロフィラリア)の筋肉に
  作用してまひさせ、駆虫効果を発揮します。成虫には効果はありません。
  感染のおそれのある期間を通じて毎日服用させます。

  レバミゾールもフィラリアの感染予防策として使われます。
  これも虫の筋肉に作用してまひさせます。
  毎日、あるいは1日おきに投与します。フィラリア以外の多くの寄生虫
  対しても効果があります。

☆使用のときの注意

感染予防薬は連続使用してもほとんど副作用がない安全な薬です。しかし、イヌがすでにフィラリアに感染している場合、これを投与すると血液中の多数のミクロフィラリアが一度に死滅してしまい、発熱や全身のショック症状がおこって、ときには死に至ります。予防薬を使う際には必ず事前に血液検査をおこない、フィラリアに感染していないことを確かめておく必要があります。

また血液検査の結果、イヌがすでにフィラリアに感染し、しかも成虫が心臓にいることがわかったら、まず成虫を殺す薬を使って駆除し、それから感染予防薬を用いるようにします。

フィラリアの成虫を殺す薬を使うときにも注意が必要です。成虫が血管や心臓の中で死ぬと、虫の死がいが肺に運ばれ、肺の細い血管につまってしまうことがあるからです。そのため、駆虫薬を使う前に、どのくらいの数の成虫が寄生しているか、病気の症状はどのくらい進行しているのかなどについて、正確に知っておくことが重要です。

もし感染が中程度以上に進行していたら、対症療法によってその症状をある程度改善してから、成虫の駆除をおこないます。薬を投与したあとの数日間は、イヌの運動を制限して安静を保ちます。

寄生する虫の数が多かったり、病気が重くなるまで放置していたりすると、駆虫薬による治療ができなくなります。そうなると、対症療法によって症状をやわらげる以外の手のほどこしようがありません。フィラリアに対しては、まず予防と早期発見を心がけてください。

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