tama’s diary

慢性腎臓病の猫の治療記録

ペットフードで使用される主な食物繊維・オリゴ糖源原料

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jpan/21/3/21_163/_pdf/-char/ja

 

キシロース:シラカバなどの樹木から抽出した「キシラン」という成分を加水分解して抽出した「キシロース」に水素を添加して作成。安全性が高いが、犬には禁止

風味改善、焼色改善、酸化防止。砂糖の600倍の甘さ

 

ペットフードにおいて食物繊維はカロリー量の調整の他、食後血糖値、食後血中中性脂肪、腸内環境、便の状態等へ大きく影響する。

 

オリゴ糖や食物繊維の主な腸管内動態
2糖類の中には乳糖(ラクトース)のようにほとんど吸収されない物があり、大腸で発酵する。

乳糖は離乳前の健康な幼犬・幼猫であれば消化可能であり、実際にイヌ・ネコ母乳には乳糖が20-40g/L程度含まれており、母乳に含まれる糖質の大半を占める[5,6,14]。エネルギー源という目的を考えるとグルコースの方がより適しているように感じるが、母乳に乳糖が多く含まれているのはおそらく腸内細菌によって利用されやすく離乳前の段階で腸内環境を整えるためであろう。細菌は置かれた環境で代謝系が変化する事が多いため、この理由を解明する事はなかなか難しいようである。成体でもラクトース代謝
可能な場合はラクターゼ活性が保持されている場合もあるが、多くはラクトースを分解する酵素を持つ腸内細菌による影響であろうという説が有力視されつつある。この他にも、小腸刷子縁膜上の2糖類分解酵素で分解しきれなかったスクロースやキシロースなどが大腸まで移行し発酵する可能性がある。単糖類は2糖類よりも浸透圧が上がりやすいため、単糖の過剰によっても軟便や下痢のリスクは高まると考えられる。母乳に単糖類が少なくより分子量の大きい乳糖やオリゴ糖が多いのは、この事も一因と思われる[36,37]。
オリゴ糖や水溶性食物繊維は主に大腸で発酵される。発酵によってカルシウムやマグネシウムといったミネラルの吸収を促進する場合があるが[24]、2価陽イオンをゲル化に利用するような水溶性繊維は吸収阻害する可能性も考えられるためペットフードの設計者は使用する食物繊維の特徴をよく知っておいた方が良い。大腸で腸内細菌がこれらを発酵する事によって酢酸、プロピオン酸、酪酸といった短鎖脂肪酸や乳酸が産生され、蠕動運動の亢進、大腸管腔内のpH低下、結腸細胞のエネルギーとして利用されるとともに、単純拡散によって血中に取り込まれる。

便の状態への影響
不溶性食物繊維は便の保形性に優れる、不溶性食物繊維は腸管通過時間を短縮するためむしろ下痢を誘発する、水溶性食物繊維は発酵するため腸内環境に良いが軟便の可能性がある、といった情報をよく見かける。しかしながら、著者の感覚としてはペットフードにおいて、どれもそう簡単に理屈通りにはいかない。

便の大きさは見かけの消化率が高まる事で小さくなるが、これは食物繊維量の制限による影響が大きい。便の大きさは片づけの観点から重視される事もあるが、便を小さくする事がペットの体にとって良い事なのかどうかは意見が分かれるところであろう。

便の臭い低減手段としてはタンパク質含量の低減や、ゼオライトのような消臭剤が使用される事もある。

タンパク質消化率への影響
水溶性食物繊維によってタンパク質消化率は一般的に低下する事が多い[26]。これは水溶性食物繊維の物理的な吸着作用も考えられるが、腸内微生物が増える事でこれらの微生物が増殖の際に自らの体を作るためにペットフード中のタンパク質などを材料としうる点も無視できない。タンパク質消化率を上げるために食物繊維やオリゴ糖類の配合を極端に削った配合は肉を主体とするグレインフリー製品において生じがちであるため、開発者や栄養設計に関わる専門家はこの点に留意する必要がある。

ペットフードに使われる主な食物繊維源、オリゴ糖

①ビートパルプ
ビート(甜菜、砂糖大根)から砂糖を搾り取った残渣であり、ペットフードや飼料で頻繁に使用される繊維源である。不溶性繊維と水溶性繊維をバランス良く含んで
おり適度に発酵する事から、海外ではスーパーファイバーと呼ばれる事もある。なお、ビートパルプは毛玉ケアに対しては効果が無いとされている[21]。
セルロースパウダー
パルプから精製される不溶性の食物繊維であり、アイスクリームや練りチューブ調味料などの食品においても粘度調整などの目的で使用されている。セルロースパウダーは他の水溶性繊維と比較するとタンパク質消化率を低下させにくいと言われている[27]。このため、炭水化物源と置換する事でカロリーを低減する手段として、肥満用製品や糖尿病用療法食で頻繁に活用されている。また一定の条件を満たしたセルロースパウダーは、オーラルケア製品や猫の毛玉ケア製品においても頻繁に使用される。
言い換えれば、セルロースを高配合する場合に水溶性繊維源原料を減らすような配合を組んではならない。論文などでは20%程度の配合が検討されている事が多いが、NRCにおいてSUL(Safe Upper Limit)は成犬で9.4%、成猫で10%とされており[28]、市販の毛玉ケア製品ではこの範囲内で効果を実現している物が主流であろう。なお、セルロースは食物繊維として分析値すると50~70%程度の値として検出される事が多いため、効果のある毛玉ケアの食物繊維量の設計値としては10%を超える事が通常である。肥満用の療法食においては効果を優先するため、SULを超える高配合となる場合もあると思われ、臨床獣医が健康状態を確認しながら処方する必要がある。
また、リグノセルロースや吸水力と離水力の両方に優れたセルロースパウダーを活用しキブルの崩壊性を高める事で、ペプシン消化率を高めながら猫における食べ物と毛玉の吐き戻し軽減技術を実現する事で特許が登録されている[32,33,34]。

⑤ジュース粕、野菜果物ファイバー
野菜や果物由来の食物繊維は他の食物繊維源原料と比較してペクチン含量が高い傾向があり発酵源として有用だが、タンパク質消化率は低下するため[13]、配合量は調整される。リンゴのように種や葉にシアン化合物が含まれる果物も存在するため、原料の製造工程や規格は確認しておく必要がある。
茶殻や緑茶抽出物が食物繊維源やカテキン源として使用される事も想定されるが、残存カフェインに留意する必要がある。

サイリウム
インドや南ヨーロッパ産のオオバコ種子の外皮であり、海外では便通改善のサプリメントや便の軟化剤などにも使用されており馴染みがあるようである。

ネコにおいて毛玉の便への排出機能も確認されており[39]、有用な食物繊維源原料の一つである。
保水能も高く、配合量が多い場合は便への水分排泄量が増すため、飲水量の確保が重要である。ナトリウム高配合による飲水促進と尿量増量手段の是非は専門家によって意見が別れるところであろう。ナトリウムによってネコの血圧は上昇しないとする説はあるが[12]、塩分感受性では無い個体のデータである可能性や長期給与による血圧上昇の可能性も否定できず、飲水量を増やす程の塩分添加は心臓や腎臓に対して潜在的な負担となり得るという思想もあろう。一方で、ナトリウムに関しては低すぎても血圧が上昇するほか[18]、著者の経験では尿量が減るため、低ければ低い程良いというわけでもない事は留意しておく必要がある。著者自身は適塩という思想をもっており健常個体を対象とした一般販路で販売されるドライキャットフードにおいてその範囲は0.4~0.6%程度、尿石の発生頻度より腎臓負担や心臓負担を優先する場合(主に老齢用)で0.3~0.5%程度と考えているが、この適塩範囲も製品ターゲットや専門家によって様々あ
ろうかと思う。ただし、獣医師の管理の下で与えられる尿石対応の療法食においては例外で緊急度を優先して高Na設計により尿量を増やす設計が取られる場合もある。

⑧その他の食物繊維源原料
アシードやアマニは食物繊維を豊富に含み、ω3脂肪酸の1種であるαリノレン酸源としても有用性の高い素材だが、アマニは残存シアン化合物に注意する必要があり、脱酸素剤が封入されたローストタイプの物を使用し、なおかつシアン化合物が含まれていない事が保証される原料を使用した方が良い。シアン化合物の残留は飼料グレードのアマニ油やアマニ油吸着飼料においても見られるため、充分に注意すべきである。

オリゴ糖

プロバイオティクスは健康被害のリスクが全く無いとの誤解も多いように感じるが、過剰発酵の他、腸管バリア機能が低下した状態では消化管では無く血中で増殖するリスクもあるため、病中、幼体、高齢個体などでは注意が必要かもしれない[38]。
この点は、特に臨床現場に携わる場合には理解しておいた方が良いだろう。

増粘安定剤としての食物繊維

②カラギナン
ネコにおいてカラギナンのような発酵性繊維が多いウェットフードではタウリン要求量が多くなる事が知られているため[11]、AAFCOのネコに対する総合栄養食基準においてもドライフードでは0.10%DM(乾物量)であるのに対し、ウェットフードでは0.20%DMと高く設定されている[1]。

④キサンタンガム

AAFCO において粉末代用乳で0.1%まで、イヌ・ネコのウェットフードにおいて0.25%を使用上限としており[4]、充分に安全倍率が設けられている。