tama’s diary

慢性腎臓病の猫の治療記録

慢性腎臓病でなくなる時

sippoのコラムから

■自宅でのケア

・犬猫が食べたいと思う食材を探す
・少量で栄養が摂れる食材を探す
・ゆっくり休ませる

 末期になると犬猫の寝ている時間が長くなり、何も食べなくなり、死に近づいていきます。犬猫が食事や薬を嫌がるなら、口をこじ開けてまで与えるのは控えたほうがいいかもしれません。

 人間だって本当に具合が悪いときには、近くであれこれ世話を焼かれるよりもそっとしておいてほしいと思いますよね。私は犬猫が慢性腎臓病の末期になったら、無理をしないで一緒の時間を過ごしてくださいと伝えています。

 ただし、治療をやめるのは病気に負けたと認めることだと考える飼い主さんや獣医師もいます。考え方はそれぞれで正解はありません。だからこそ犬猫の病気がわかった段階で、獣医師と治療や看取りについて話し合うことが大切なのです。


犬猫のことを考えて治療を終える選択肢もある
亡くなるときは老衰に近い眠るような死に方
 慢性腎臓病による死が近づいたときは、「食欲がまったくない状態が1週間以上続く」「寝ている時間が長い」「嘔吐を繰り返す」といった状態になります。

 犬猫が亡くなる前日や当日には血圧が下がるので、口の粘膜が白くなってきます。私は飼い主さんに犬猫が亡くなる兆候を伝えて、看取りの方法や場所の相談をしています。最期が近いことを伝えなければ、飼い主さんはいつまでも「生」にこだわって犬猫とのお別れの準備ができないからです。

 慢性腎臓病の死に方は、だんだん動かなくなって寝る時間が長くなって眠るように亡くなることが多いと思います。犬猫の最期はおそらく意識がもうろうとしているので、そこまで気持ち悪さを感じないかもしれません。老衰や自然死に近い死に方だと思います。

看取り方
「腕の中で看取らなければ犬猫がかわいそう」と思い込んでいませんか? 飼い主さんの気持ちとしては腕の中が理想かもしれませんが、犬猫を静かに見守ることも看取り方のひとつです。

 最期が近づくと、犬猫の体をほんの少し動かしただけで呼吸が止まってしまうことがあります。また、家族が不在のときに亡くなることも少なくありません。病気の末期はささいな刺激が亡くなるきっかけになるので、「自分が動かしたせいで」「最期に見送れなかった」と自責の念をもたないでくださいね。亡くなったときが愛犬、愛猫の寿命です。

 なかには「ペットの死を見るのがつらいから」と、動物病院に入院させる飼い主さんもいます。看取り方はさまざまですが、私は十数年を共に暮らした犬猫の死を飼い主さんには何らかの形で見届けてほしいと思っています。

 

命を危うくする病気は老化でもある
 ペットが命に関わる病気になったとき、多くの飼い主さんは「原因は?」「どうして?」「何が悪かった?」と過去を振り返り、後悔し、自分を責めます。しかし、過去にとらわれていては治療に向き合えず、犬や猫のために良い選択ができなくなってしまいます。

 もし火事で家が燃えていたら、とにかく火消しをしますよね。原因は火遊びや寝タバコかもしれませんが、それを知ったところで火は消えないでしょう。病気も同じで、原因を探すよりも飼い主さんと獣医師が協力して今必要な治療を行うことがペットのためになります。

 高齢になって発症する病気は自然発生的に起こる老化のひとつであり、原因を探っても治りません。歳をとれば皮膚が老化して白髪やシワが増えるように、腎臓や心臓などの臓器も悪いところが出てきます。「薬を飲めば完治するはず」と期待する気持ちもわかりますが、80歳の皮膚が20歳の肌に戻らないように、老いによる病気は治療しても治らないのです。

動物の苦痛を少しでも楽にしてあげることが大切
 獣医師をしていると、いかに死が理不尽で急にやってくるか身に染みて感じています。しかし死んでいく動物が悔いを残すことはありません。過去を振り返って後悔したり、未来を思って不安になったりするのは人間だけなのです。 

 命は一方通行です。最高の医療を行ったとしても、老いを少し遅らせたり、痛みを少し楽にしたりすることしかできません。穏やかな最期を迎えられるように獣医師として尽くしますが、幸せな看取りへと導いてあげることは飼い主さんの大切な役割です。

 

動物を主体にして、治療や看取りを考えることも大切
ペットロスになりやすい飼い主とは
 ペットとの別れを想像できなかった飼い主さんは、悲しみのあまり「ペットロス」に陥ってしまうことも少なくありません。愛犬や愛猫と一心同体のような関係だった飼い主さんは、看取った後に強い喪失感が沸き起こる傾向があります。また、初めて飼ったペットが亡くなったときにもペットロスになりやすいと思います。

 人間の死はだいたい年齢順に回ってくるもので、親より先に子どもが亡くなることは決して多くありません。しかし犬や猫は人間の寿命より短く、飼い主より早く亡くなることが大半です。それもペットロスを生む要因のひとつ。親(年上)を亡くしたときと、子ども(年下)を亡くしたときでは悲しみの深さが違うのではないでしょうか。

 愛犬、愛猫の死が悲しいのは当たり前ですが、もし自分が亡くなって残された家族が病気になるほど泣き暮らしていたら、「そんなに悲しまないで」と思いますよね。彼らもペットロスから病気になってしまった飼い主さんを見たらきっと心配します。

 動物が死ぬときは十分生きたときです。犬や猫が一生懸命生きて亡くなったことを飼い主さんは受け入れてあげてください。それこそ愛犬、愛猫が最も喜ぶことだと思いますし、獣医師としての願いでもあります。

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最近読んで、心持が変化した本です。

ありがとう。また逢えるよね。 ペットロス 心の相談室 増補改訂版

https://www.futabasha.co.jp/book/97845753162160000000