血はどのようにしてつくられる?~造血のメカニズム~
私たち人間の体内をめぐる血液の量は、体重のおよそ1/13とされています。その血液が、細胞に酸素や栄養分を運び、あらゆる臓器や組織が働き、生命が維持されています。 この大切な血液をつくっている場所が、骨の中心部にある骨髄です。 ここに造血幹細胞という血をつくる細胞があり、骨髄の中で盛んに細胞分裂を行い、赤血球・白血球・血小板の三種の血球に成長します。骨髄は常に新しい血球が産生されるため、造血器とも呼ばれています。
造血のしくみ
赤血球は核がない極めて特殊な細胞といわれますが、産生されてすぐの赤血球(赤芽球)には核があり、ヘモグロビンも含んでいません。成熟するにつれて、核は小さく凝縮し、それとともにヘモグロビンがつくられていきます。そして核が赤血球から脱出すると、ようやく成熟した赤血球となり、血管内に送り込まれます。 赤血球の寿命は約120日とされ、全身を循環し、寿命を全うすると最後は脾臓や肝臓で破壊されます。正常な人で、毎日だいたい赤血球全体の0.8%が入れ替わっていると言われます。つまり、血液中の赤血球の数を維持しようとすると、その分を毎日補給しなければなりません。 赤血球は寿命がくると死滅し、中に含まれていたヘモグロビンは遊離して、鉄とポルフィリン体(色素)とグロビン(タンパク質)に分解されます。グロビンと鉄は肝臓や脾臓で処理され、再びヘモグロビンの素材として再利用されます。 また骨髄は、おもに睡眠時に活発に働いて血球を産生します。そのため寝不足が続くと体は古い血液を使いまわすようになり、血液の質が下がっていきます。睡眠は良質な血液をつくるうえでもとても重要な生命活動なのです。
造血ホルモン・エリスロポエチン(EPO)
造血を語るうえで欠かせないのが、赤血球産生を制御するホルモンのエリスロポエチン(EPO)です。体内で低酸素状態が感知されると、腎臓が応答してエリスロポエチンが分泌され、骨髄中の造血幹細胞に働いて血球の産生を刺激します。
医薬としてのエリスロポエチン(EPO)
エリスロポエチンが合成できない障害を「腎性貧血」といいます。おもに慢性腎不全で透析を受けている患者さんに起きやすい貧血で、エリスロポエチンの合成量が低下することによって骨髄で赤血球がつくれなくなるという貧血です。 エリスロポエチンは人工で合成することが可能で、その薬剤の普及により腎性貧血は緩和されるようになりました。 その一方で、一部のスポーツ選手が、酸素運搬能力(持久力)を向上させようとエリスロポエチン製剤を使うというドーピング問題も起きました。赤血球が増えすぎると血液がドロドロになり血栓をつくりやすくなり、心筋梗塞や脳梗塞などの危険性が増すため、エリスロポエチン製剤は世界アンチドーピング機構(WADA)の禁止薬物にも指定されています。
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#日本大百科全書(ニッポニカ)「ヘム」の解説
広義には鉄とポルフィリンの錯塩を総称し、狭義には2価の鉄イオンがポルフィリンに配位したものをさし、3価の鉄イオンが配位した錯塩は、とくにヘマチンhematinともいう。ポルフィリンの種類によって、ヘムa、ヘムb(プロトヘム)、ヘムcなどと分類される。これらはすべて赤色を呈する色素であり、生体内ではタンパク質と結合してそれぞれ特有の働きをしている。たとえば、ヘモグロビン(血色素)やミオグロビンなどは酸素の運搬や貯蔵をつかさどり、カタラーゼやペルオキシダーゼ、チトクロム類などは活性酸素を分解したり、生体エネルギーを生産する酸化還元反応を触媒する酵素の活性部分として重要な役割を果たしている。これは、ヘムが酸素や電子を運ぶ働きをもつことによる。なお、ソーセージやベーコンなどの肉製品には、発色剤として亜硝酸塩が使われている。肉類に含まれるミオグロビンやヘモグロビンのヘムの2価の鉄イオンが徐々に酸化され、褐色に変化する。これに亜硝酸塩を添加すると、ニトロソミオグロビンやニトロソヘモグロビンをつくり、鉄イオンの酸化を防ぎ、美しい赤色を保つようになるためである。
#5-アミノレブリン酸
5-アミノレブリン酸は、動物においてはポルフォビリノーゲンシンターゼによってポルフォビリノーゲン(EC 4.2.1.24)に代謝され、さらにヒドロキシメチルビラン→ウロポルフィリノーゲンIII→コプロポルフィリノーゲンIII→プロトポルフィリノーゲンIX→プロトポルフィリンIXとなる。プロトポルフィリンは鉄イオンを配位することで、血液中のヘモグロビンや薬物代謝酵素であるP450を構成するヘムとなる。
#管理栄養士国家試験徹底解説
人体の構造と機能及び疾病の成り立ち
https://diet2005.exblog.jp/23943449/
29-46 赤血球に関する記述である。正しいのはどれか。1つ選べ。
(1)赤血球のヘモグロビンは、銅を含む。
(2)末梢血中の赤血球には、1個の核がある。
(3)老朽化した赤血球は、脾臓で破壊される。
(4)赤血球の寿命は、末梢血中で約30日である。
(5)赤血球の産生は、トロンボポエチンによって刺激される。
(1)× 赤血球のヘモグロビンは、鉄を含む。
ヘモグロビンは、ヘムとグロビン(たんぱく質)からなる。ヘムは、ポルフィリン環と鉄からなる。ポルフィリン環は、4つのピロール環がリング状につながったものである。鉄は、ポルフィリン環の真ん中に結合している。老化した赤血球が破壊されたとき、グロビンを構成するアミノ酸と鉄は再利用されるが、ポルフィリン環はビリルビンに代謝されて胆汁中に排泄される。
(2)× 末梢血中の赤血球には、核はない。
赤血球は、骨髄で作られる。骨髄には、すべての血球細胞のもとになる造血幹細胞がある。もちろん造血幹細胞は、核を持っている。腎臓から分泌されるエリスロポエチンは、造血幹細胞が赤血球の前駆細胞である赤芽球に分化・増殖することを促進する。赤芽球も、もちろん核を持っている。赤芽球の成熟が進み、細胞質に十分なヘモグロビン量を合成すると、これ以上新たなタンパク合成は必要ないので、核を細胞外に放出する。これを脱核という。
(3)○ 老朽化した赤血球は、脾臓で破壊される。
末梢血中に出てきた赤血球は、核を持たないので新たなたんぱく質を合成できない。このため、赤血球内のたんぱく質は、次第に劣化する。これを赤血球の老化という。老化した赤血球は変形能が低下するので、脾臓の毛細血管に引っかかってしまう。引っかかった赤血球は、脾臓のマクロファージにより貪食され、破壊される。
(4)× 赤血球の寿命は、末梢血中で約120日である。
(5)× 赤血球の産生は、エリスロポエチンによって刺激される。
トロンポイエチンは、血小板の産生を刺激する。
食品中に含まれる5-ALAの量 (100 gあたり)
ALAサイエンスフォーラム第2回マスコミセミナー 発表資料より一部改変