tama’s diary

慢性腎臓病の猫の治療記録

極論で語る腎臓内科

専門的な本です。

https://www.m2plus.com/content/11524

1.急性腎障害(AKI)の予防のために

・「適切」な血行動態の維持と不必要な腎毒性物質への暴露の回避

・「適切」な血行動態の維持とは腎に適切な血流を保つこと

・非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)は輸入細動脈の拡張を阻害し、腎への血流を減らす

・レニンアンジオテンシン系(RAS)阻害薬は輸出細動脈の収縮を阻害し、腎血流が低下する

・RAS阻害薬は、降圧薬として多用されているだけでなく、蛋白尿減少効果による臓器保護作用と併せてよく使われている。食欲低下、脱水、低血圧の際は一時的に休薬することが望ましい

心不全患者においては無意味な輸液は腎臓にとっても「害」

・フロセミドへの反応が悪い症例では、無意味にフロセミドを投与し続けるべきではない。

・大事なことは、腎前性の要素がないことを確認したうえで、十分な量のフロセミドを使う。

・例えば、ボーラスで200mg投与しても尿量が増加しなければ効果なし。その使用を諦めることが重要。

・院外発生での急性腎不全に対しては腎前性を考慮して、まずは輸液。利尿薬を反射的に投与するよりははるかに適切。

 

2.尿所見

・尿試験紙法:アルブミン以外の蛋白は基本的に検出できない。

 尿の濃さに影響されるので「濃い」場合は実際には尿蛋白はそれほど出ていないことが多い。尿比重が1.035なら1+まではOK。2+で33%、3+で100%   

 偽陰性はpH3以下の酸性尿、偽陽性はpH8以上のアルカリ尿や造影剤投与後

 

・頻尿:尿の回数が多い

・多尿:尿の量が多い。1日尿量が3L以上。

・乏尿(ほとんど出ない。1日400ml以下)・無尿(全く出ない。1日100ml以下)がみられたら急性腎障害

ホメオスタシスの観点からは、摂取している溶質の量と同じだけの溶質を尿中に排泄する必要がある。

・猫:多尿/多渇の症状は、腎臓の機能の60%以上が失われないと現われません。

・尿中に400倍視野で白血球を5個以上認める場合、病的とされ「膿尿」という

 尿路感染症、尿路腫瘍、尿細管間質性腎炎など

・円柱:尿細管から分泌されるムコ蛋白などを主成分とし、各種細胞成分などが取り込まれ形成される。円柱が形成される部位よりも上流の糸球体、尿細管、間質に病変があると、逸脱した種々の細胞が閉じ込められ細胞円柱となる。時間が経過して円柱内の細胞が崩壊すると「顆粒円柱」となり、さらに変性が進むと「ろう様円柱」となる。顆粒円柱やろう様円柱も通常は見られず、その出現は腎機能障害があり、細胞円柱が変性する時間があるほど尿細管内の原尿の流れがゆっくりしていることを示唆する。

http://www.labo.city.hiroshima.med.or.jp/wp-01/wp-content/uploads/2014/01/center201008-02.pdf

・蛋白尿が長期的な腎予後を予測する

・病的な蛋白尿は「腎前性」「腎性」「腎後性」の3つに大別される。

 ①腎前性:オーバーフロー型蛋白尿

  分子量の小さい蛋白が大量に産生され、糸球体でろ過される量が尿細管での再吸収能力を上回るため、尿中に漏れ出る。ベンスジョーンズ蛋白(多発性骨髄腫、原発性マクログロブリン血症)

 ②腎性:糸球体性蛋白尿と尿細管性蛋白尿

       ・糸球体性蛋白尿は糸球体基底膜の透過性亢進や傷害による。主にアルブミン(糖尿病性腎症、腎硬化症)

 ・尿細管性蛋白尿は近位尿細管での再吸収障害(間質性腎炎、中毒性腎障害)

 ③腎後性:腎盂以外の尿路系病変

・尿蛋白/Cre:尿蛋白の量を筋肉量が少ない人では過大評価、多い人では過少評価してしまう。注意。

 

3.脱水と浮腫

体液は、細胞内液に40%、組織間液に15%、血漿に5%分布しています(%は体重に占める割合です)。

細胞内液が細胞外液の2倍あることは重要な意味をもっています。すなわち、細胞外液(循環血液量)が減少した時にも、細胞内液が細胞外に移動して補うリザーバーとしての役割を果たしています。細胞内液はエネルギー産生やタンパク合成など、代謝反応に関係しています。

細胞外液は循環血液量を維持し、栄養素や酸素を細胞へ運搬したり、老廃物や炭酸ガスを細胞外に運び出す役割を果たしています。

https://www.otsukakj.jp/healthcare/iv/knowledge/

・脱水は素早く、浮腫はゆっくり治療する

・なぜ浮腫が出来ているのか、つまりNaと水が貯留しているのかを考えたとき、心不全や肝硬変においては有効循環血漿量の減少に対する代償的な作用である。それに対して、腎不全におけるNaと水の貯留は不適切であり、有効循環血漿量と細胞外液量の両方が増加している。この違いは重要で、心不全や肝硬変の場合は、利尿薬による浮腫の治療をやりすぎると、さらなる有効循環血漿量の減少をまねく可能性がある。また、利尿薬投与による腎機能の悪化に細心の注意を払う必要がある。

・除水により有効循環血漿量が減少、組織還流が障害されているかを確認するには「BUN」「血清クレアチニン値」「UAの推移」が役に立つ。これらが上昇しはじめていなければ、利尿薬による有効循環血漿量の減少が組織還流を大きく障害していないと判断することが多い。上昇し始めていたら、さらなる除水は避ける必要がある。

・ループ利尿薬は血中濃度が上昇しすぎると聴毒性を誘発する可能性があるので、天井量を投与しても利尿が得られない場合、フロセミド単独での治療は諦める。

・セカンドチョイスでトルバブタンを使用するときは、高Na血症の予防のために飲水制限を解除することを忘れてはいけません。

4.輸液

・不必要な輸液をしないことは、経口摂取を進め、退院を早くさせることと関連している。

・普通の状況で多少過剰な輸液が行われても問題が起こらないのは腎臓が適切に代償を行っているから。

・しかし、高齢者や慢性腎臓病患者ではその代償機能が低下しているためそうはいかない。(ex.採血で低Na血症を認め、輸液を中止していなかったと気付く)

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1.異常の是正(水分、電解質、酸塩基平衡など)を目的として「補充輸液」

2. 体液の維持を目的として「維持輸液」

ゴールデンルールとして

1.細胞外液が欠乏して低血圧やショックいなっている患者には補充輸液として生理食塩水(0.9%) 

2. 細胞内液が欠乏して高Na血症になっている患者には5%ブドウ糖液(5%dextrose solution:ゴパグル

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・三毛は今、乳酸リンゲル液70ml点滴してるから、食塩0.54gになる。

(130/17=7.6 1Lで7.6gの食塩。 生理食塩水なら154/17=9 1Lで9gの食塩)

 フードは50g(約1日量)で食塩はたぶん0.5gだから、同じくらいの量を摂っていることになる。それほど、負荷はかかっていないかな。もし、200ml点滴すると1.52gだからちょっとヘビーなのかも

・張度:ナトリウムやカリウムなど、生体内で細胞膜を介した、水の移動を引き起こす浸透圧物質による圧

・輸液製剤は大きく3種類:5%ブドウ糖液、晶質液(生理食塩水)、膠質液

・5%ブドウ糖液中のブドウ糖はすぐに細胞内に取り込まれ代謝されてしまう(稠度がなくなる)ので、水を輸液したのと同じことになる。(だったら、水を最初から使えばと思うかもしれないが、水は静脈内に投与すると溶血を引き起こすため、使えない)

・ちなみにこの5%ブドウ糖液を1L輸液したとしても、血管内にとどまるのはわずか80ml。よって、血圧をあげたいときには5%ブドウ糖液はとても効率が悪い選択。

・細胞外液量減少時の経口補液:市販のOS-1

 2%ブドウ糖液+70mEq/L程度のNa

 水分のほとんどは小腸で吸収される。Naとブドウ糖を一緒に摂取すると吸収が促進する。(スポーツドリンクはNG 過度のブドウ糖がさらなる水分損失を引き起こすため安易に用いてはいけない)

ラクテック=乳酸リンゲル液

・輸液をしているときは電解質のチェックをする!!何らかの異常があるときは輸液を考え直す。気休めの輸液はしてはならない!医原性の低Na血症に注意!

 

ロケルマ 高K血症の治療薬

https://www.info.pmda.go.jp/go/pack/2190040B1020_1_04/?view=frame&style=XML&lang=ja

作用機序
本剤は、均一な微細孔構造を有する非ポリマーの無機結晶であり、カリウムイオンを選択的に捕捉して水素イオン及びナトリウムイオンと交換する。本剤は、カリウムを捕捉して糞中に排泄させ、消化管内腔における遊離カリウム濃度を低下させることにより、血清カリウム濃度を低下させ高カリウム血症の改善をもたらす。

陽イオン選択性
In vitroにおいて本剤は、カルシウムやマグネシウムのような他のイオンの存在下でも、カリウムイオンに対する高い選択性を示す 。

 

12.高血圧

・Non-dipperと夜間頻尿

血圧の日内リズムが正常であれば夜間の血圧は昼間の覚醒時に比較して10~20%低下する(正常型dipper)。そして、夜間の血圧低下が少ない型(夜間血圧下降度0~10%)がNon-dipper。逆に夜間に血圧上昇を示す型がriser。non-dipperやriserでは臓器障害や脳心血管死亡のリスクが高い。

その一方で、non-dipperを見たら夜間頻尿の有無の問診が必要。また逆に逆に夜間頻尿を見たらnon-dipperである可能性がある。夜間頻尿と聞くと、前立肥大症に伴う症状と思いがちですが必ずしもそうではありません。人の体は1日の帳尻をその日のうちに合わせようとする。つまり、1日の塩分摂取量が多く、日中のうちにすべて体外に排泄できていない場合は夜間も排泄を続ける。その結果として、夜間頻尿となっており、塩分を体外へ排泄するために夜間に高血圧となっている患者さんがnon-dipperの中にいる。このような患者さんには減塩はもちろんですが、サイアザイド系利尿薬を処方し、日中に「塩抜き」しておくと、夜間に高血圧になる必要がなくなり、non-dipperからdipperになることが知られている。

ふつう、夜間は昼間より血圧が低いから心臓や腎臓の仕事は減るはず。

・高血圧の治療は、非薬物療法薬物療法

 ①非薬物療法:減塩、