tama’s diary

慢性腎臓病の猫の治療記録

腎臓病の猫 No.4 「ラプロス」

Cre2.5でステージがあまり進んでいない高齢猫に、進行しないようにラプロスを使ってみることにしました。

 

・ラプロスについて

「ラプロスの有効成分であるベラプロストナトリウムは、血管内皮細胞保護作用、血管拡張作用、炎症性サイトカイン産生抑制作用及び抗血小板作用を有している。慢性腎臓病の病態における糸球体障害や尿細管間質の炎症及び線維化、微小血栓の形成及びそれらの繰り返しによる虚血状態の増悪に対して、毛細血管の減少や間質の炎症、微小血栓の形成を抑制し、虚血及び線維化を抑制する。」共立製薬のHPより

効果がありそうですが、事前にネットで検索したら、副作用が出てぐったりしたと書いてあったのを見て心配になり、論文を読みました。

A Double-blind Placebo-controlled Multicenter Prospective Randomized Study of Beraprost Sodium Treatment for Cats with Chronic Kidney Disease

J Vet Intern Med. 2018 Jan;32(1):236-248.

M Takenaka 

A Double‐blind, Placebo‐controlled, Multicenter, Prospective, Randomized Study of Beraprost Sodium Treatment for Cats with Chronic Kidney Disease (nih.gov)

⇧全文が見れます。

猫の腎不全治療の薬!ラプロスの効果や副作用、価格など! | ネコホスピタル (uruurumi.com)

こちらは上記の論文を要約(日本語)しています。

 

人では肺動脈性肺高血圧症の薬で、腎臓への適応はあまりないようです。人の添付文書の効能は、原発性肺高血圧症、慢性動脈閉塞症の潰瘍の改善、慢性動脈閉塞症の疼痛の改善、慢性動脈閉塞症の冷感の改善腎臓で、腎臓への効能は載っていません。論文も効果はあるとする報告とないとする報告とあります。ラットで調べたら効果があったとする論文はいくつか出ていますが、猫ではあまり調べられていないようです。

上記の論文では、効果があり、副作用と認められた事例はなかったと書いてありましたが、31匹の猫に投与して32の不調が報告されていました。また、血圧は調べるのが難しいので検討されていなく、不安が残りました。

ラプロスの添付文書には副作用は記載されていないようで、獣医さんは副作用はないと説明するようですが、実際はネットで調べるとあるようです。(人のベラプロストナトリウムの添付文書には副作用が記載されているのに、動物で副作用がないとしたのは??? 副作用はよく分からなかっただけで、なかったのではないと思います。。。)

以前、セミントラで猫ちゃんがぐったりした経験があるので、今回は慎重に試してみることにしました。

ラプロスは1錠55μgで朝晩一錠ずつ飲みますが、心配だったのでまずは1/2錠のませました。(人では1日60μgを3回で処方されます。つまり体重60kgとして1日60μgだから、1μg/kgです。4kgの猫ちゃんなら4μgになります。55μgは10倍以上なので多いなと思いました。)

ラプロスは肺動脈性肺高血圧症の薬で血管を拡張する作用があり、人では副作用として顔面紅潮がありますので、もし、猫ちゃんに副作用が出るとしたら、まずは血圧の低下や元気の消失、その次に下痢や吐き気だろうと予想しました。事前に血圧を測定したところ100/70でした。飲ませた後の血圧は、30分後:130/90、1時間後:112/76、2時間後:138/75 でした。猫ちゃんは少しの事で血圧が変動するので、この上昇は副作用ではないと思ってしまいましたが、その日の夜、変な咳をしていて気になりました。翌日、再度、飲ませたところ、2時間後に血圧が140/100になり、お腹で息をして苦しそうでした。病院に向かう間もとても苦しそうでした。特別な処置はしなく次第に治りましたが、ラプロスは中止しました。

結局、不安は的中し、副作用で中止になり、猫ちゃんにかわいそうな事をしました。1日目で中止すれば良かったし、まだ猫ちゃんに適応して間もない薬でよく分かっていないのに試してしまい後悔しています。腎臓の効能があるのかもはっきりわかっていない、元来、血圧の薬なのに、それを血圧が正常の猫に投与してしまった事をとても後悔しています。

これから、ラプロスを試す方はよくよく猫ちゃんの様子を観察して注意してあげてください。血圧が上がることは腎臓に良くなく逆効果です。

血圧の薬は出来るなら普段の血圧を測定してから検討した方が良いと思います。確かに高齢猫の慢性腎臓病の多くは高血圧になりますが、自分の猫ちゃんが高血圧でないのに処方されたらどう思いますか?

ラプロスは日本だけで適用されています。効能書きにあるような効果が本当にあるなら、昔からある薬ですし、外国でも使用されてもいいと思いますが、そうではありません。ラプロスについては日本での臨床実験のような気がしてしまいます。私の知り合いは腎臓のために使い続けましたが、ずっと下痢でかわいそうでした。

今のところ、私の猫ちゃんは補液(点滴)が合っているようです。

 

もしラプロスが原因で副作用(ぐったりしたり、下痢、食欲不振、吐き気)がでたら…

「Wistar 系雄性ラットに 3H-ベラプロストナトリウムを 1mg/kg の用量で経口投与したとき、血液を含めほとんどの組織中放射能濃度は速やかにピークに達した。その後、徐々に減少し、投与後 24 時間には大半の放射能が体内から消失した」と報告されています。

腎臓が弱っていたらデータより時間がかかるかもしれませんが、最後に飲ませてから24時間すぎたら下痢などは治まってくると思います。

薬は、①肝臓から胆汁中へ、その後便として排泄されるか、②腎臓から尿中へと排泄されます。
なので、個人的には下剤は飲ませない方がラプロスが排泄されると思います。

 

血圧測定器:エルデ エルデ ペットの血圧計 / TOPページ (erde.co.jp)

エルデと同じもので安いのを見つけました。コンテックです。

CONTEC08A-VET 動物用血圧計 デジタル血圧モニター デジタル血圧計 獣医/動物NIBP + SPO2プローブ|血圧計通販-Dentalshop.JP

AIMが販売されるまで頑張ってほしいです。AIM活性化食品を添加したエサやサプリメントの販売を、そして、AIMの安全性が確認されてネコ薬(AIM薬)が使用できる日を心待ちにしています。

腎臓の働きを改善する遺伝子「AIM」でネコの寿命が2倍に!? | 広報誌「淡青」37号より | 東京大学 (u-tokyo.ac.jp)

 

※Yahoo知恵袋にこのようなコメントが載っていました。

「ラプロス(ベラプロスナトリウム)の使用で考えられる消化器系の副作用は、嘔気、下痢、食欲不振、胃潰瘍、嘔吐、胃障害、腹痛などがありますので、ご相談にあるような緩いうんちはラプロスによる副作用かもしれないですね。

半年近くラプロスを使用していれば、これ以上慣れることはないと思いますね。

他にも心配なのは、レナトスの水素が腸管内で酸化物質の活性酸素と結びつくことで水を作ります。
それで下痢が進行しないかが不安要素ですね。

そもそも論ですがラプロスの慢性腎臓病に対しての効果は、獣医師たちの中でも意見が真二つに分かれているようですね。

私が疑問に思うのは、ヒトへの「肺高血圧症」と「慢性動脈閉塞症に伴う潰瘍、疼痛及び冷感の改善」の治療薬として29年前から使われてきましたが、ヒトでの慢性腎臓病治療で使用されることが全くないというところになります。それはヒトでの慢性腎臓病の効果の確実性が証明されず、保険適用がされなかったために添付文書に記載がなかったものと想定されます。

その特許切れの古い薬を高値で売るために、動物の慢性腎臓病に効果があるものとして、「厚生労働省」ではなく、「農林水産省」に届を出して、動物の慢性腎臓病治療薬として再発売したものと推測されます。

欧米でペットの慢性腎臓病治療に使用されていないのは、このあたりが背景にあると思います。

また、ラプロスと同様のワルファリンなどの血流改善薬は、出血リスクを高めることに繋がるため、死亡リスクが有意に上昇する(Jカーブ曲線 )というエビデンスが存在します。

また腎臓の血液の出口にある、輸出細動脈を開いていないのに血流をよくすれば、腎臓の糸球体内圧が上がり腎臓への負担が大きくなります。

またラプロスが謳う線維化や間質化の防止は、レンジアレンなどの非カルシウム系リン吸着剤や、抗酸化サプリメントの摂取でMBDリスク(ミネラルバランス障害リスク)を低減できるので、ラプロス自体の必要性に疑問を感じています。

現にうちの子にはラプロスを使用していませんが、十分に腎臓の数値をコントロールできていますね。

今後のうんちの状態を見て、ラプロスの使用を判断していただきたいと思います。」

https://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q12239730852?__ysp=bmZrIOODqeODl%2BODreOCuQ%3D%3D

・ある獣医さんに「ラプロスは効果ありますか?」と聞いたら、「Creが下がるとか、はっきりした効果は今まではありません。」と言われていました。

・動物病院のHPから

ただ人間の慢性腎臓病では使われていませんし、有効とする報告もありません。また腎臓の尿細管には良さそうなのですが、糸球体という別の部位に対して、ラットにおいては否定的な研究結果も存在します。

https://minato-ohori.com/service/ckd_cat_our_guideline2020/

・ラプロスの詳しい説明

https://med.toaeiyo.co.jp/products/dorner/pdf/if-dor.pdf