tama’s diary

慢性腎臓病の猫の治療記録

フィラリア予防薬 イベルメクチンについて

フィラリアの幼虫(ミクロフィラリア)を駆除するシンプルな錠剤には、イベルメクチンやミルベマイシンなどの駆虫成分が含まれています。

 

フィラリア予防薬 ~イベルメクチンについて~
hearts 2011年6月17日 院長コラム
少し遅くなりましたが、今時期のフィラリア予防薬についてのお話です。
地域によって予防する期間は異なりますが、現在 使われているフィラリア予防薬はほとんど同じです(各メーカーから色々なタイプの薬が出ています)。
今回は、数あるフィラリア予防薬の中で、イベルメクチン製剤についての情報です。
イベルメクチンという薬は、フィラリアの予防だけでなく、疥癬カイセン)や毛包虫症(アカラス)、ミミダニやその他線虫類の駆虫など広範囲の駆虫効果を持った駆虫薬です。
もちろん、薬ですので上記のような作用の他に、下記のような副作用出る事があります。

副作用として見られる主な症状は神経症状と言われるもので、
散瞳や沈うつ、よだれ、嘔吐、運動失調、振戦、意識障害、徐脈、呼吸低下、昏睡などがあり、最悪の場合、亡くなることもあります。

この副作用がどうして発現するか…
① 簡単に言うと、
通常、脳にイベルメクチンの影響が出る事はありません。
ですが、血液脳関門」(脳内に薬物が入らないようにバリア構造になっている場所)の働きが悪く、脳がイベルメクチンの影響を受けるためです。
② 細かく言うと、その現象は、
“MDR1遺伝子”の欠損により引き起こされます。
この遺伝子は、体内に入ってきた薬物(異物)が脳や脊髄といった重要な組織に侵入し問題を起こさないように、薬物を汲み出す働きをしています。主に、血液脳関門に存在しています。また、類似の構造が腸管粘膜などにも存在し、食事のように口から摂取されたものに対し、有害物質が腸粘膜から吸収されるのを防いでいます。
 副作用が出る場合、このバリア構造が欠損 又は 不完全なために起こります。そのため、通常よりも多くの薬物が脳を含めた体内に入ることになり、副作用=中毒を起こすわけです。
副作用が出る可能性があるのは、
① コリーやシェルティ、ボーダーコリーなどのコリー系統の犬種
② 3ヶ月齢未満の子犬(血液脳関門が不完全なため)
③ フィラリア陽性の犬(急性フィラリア症を起こす可能性があるため)

そのため、①に関しては、
フィラリア予防薬にイベルメクチン製剤を使用する事に不安を持つ方もおられると思います(特にコリー系の犬種の飼い主さんは)。
実際のフィラリア予防のために用いるイベルメクチンは、とても低用量なので、一般的には“副作用の出る可能性は低い”という事になります。しかし、疥癬や毛包虫症の治療で使用するイベルメクチンは高用量での投与になるため、副作用が出る危険性が高くなります。
(ただし、低用量だから絶対に大丈夫とは言い切れません。)
それぞれの動物病院での考え方により処方される薬は異なると思いますが、当院では、コリー系の犬種にイベルメクチンを処方しないようにしています。上記のように、まず副作用の可能性はありませんが、同じフィラリア予防薬の中で、コリー系の犬種にも副作用が出ないような薬がある為、そちらを処方するようにしています。もちろん、飼い主さんの了承が得られればイベルメクチンも処方しています。
②に関しては、
年齢を確認すれば問題ありません。
③に関しては、
フィラリア予防薬を飲ませる前に毎年、必ず検査(血液検査)をしてから飲ませて下さい。薬を飲ませたと思っていても、どこかで吐き出していたり、下痢や吐き気があってうまく吸収出来ていない事もあります。それにより、感染した例も実際あります。
薬は使わないにこした事はありませんが、状態によっては使った方が早く治る場合があります。
そして、使う場合には、多かれ少なかれ副作用が付いてきます。
きちんと用量や使用方法を守って投薬すれば、問題が出る事は少ないと思います。もちろん、その薬の効果や副作用もしっかり聞いておく事が重要になります。聞きにくいと思わず、副作用が出た時に対応するのは飼い主さんですから、どんどん聞いて良いと思いますよ。

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